「超大量品」という
新たなマーケットを切り開いた開拓者たちの軌跡

電子機器には、その機器を制御するためのプリント基板が組み込まれている。その基板上には、基板と基板をつなぎ、基板とモジュールを接続するためのコネクタが必要になるが、特に老若男女問わず多くの人が所有するモバイルデバイスをはじめとした民生機器向けのマイクロコネクタ市場は、ヒロセ電機にとって魅力的なマーケットの1つであることは間違いない。

「超大量品」という、かつて経験のないビジネスへの挑戦

そんなマーケットのなかで、グローバルに展開する某民生機器大手に営業(yè)活動を続けてきたのが営業(yè)本部の村木だ。村木がアプローチしてきたこの企業(yè)には、これまで小規(guī)模での採用実績はあったものの、市場規(guī)模の大きな機器に対するコネクタ提供には至っていなかった。當然ながら、北米市場を擔當する営業(yè)としては、ある大規(guī)模プロジェクトへのコネクタ採用は長年の悲願だったという。「1プロジェクトだけで、通常の機種に比べて10~20倍ほどの商売になる案件です。何とか新たな販路として商売につなげていきたいと考えていました」と當時の想いを吐露する。これまで経験したことのない「超大量品」のビジネスへ挑戦しようとしていたのだ。

しかし、その商売をモノにするためには、先方の要求に応えるための技術(shù)力や高い品質(zhì)だけでなく、その組織體制をいちから構(gòu)築していく必要があった?！父偤纤绀颔佶螗隶蕞`クしてみたところ、営業(yè)から技術(shù)まで専門組織を米國內(nèi)で整えていることが分かりました。本気でこのビジネスに取り組むためには、我々も同様の體制を整備する必要があったのです」と村木は力説する?，F(xiàn)在は営業(yè)やフィールドアプリケーションエンジニア（FAE）を含めて16名あまりの専門組織にてビジネスを行っており、米國のみならず日本にも専門チームを用意し、オンラインサポート環(huán)境まで用意している狀況にある?！弗哎愆`バルなトレンドを見據(jù)えながら市場変化に追隨するためにも、會社を上げて組織作りに取り組んでもらうように何とか説得していきました」と村木は語る。

その営業(yè)からの要請を受け、顧客の要望を直接ヒアリングするFAEとして招集されたメンバーの1人が、以前から民生機器の分野で活躍してきた技術(shù)本部の大井だ?！柑囟ē抓恁弗Д趣螌熑螛I(yè)務は初めての経験です。オランダに1年赴任した経験があったものの、FAEという立場は今回が初めて。語學的にも不安があり、どのように業(yè)務に取り組めばよいかわからないというのが正直なところでした」と當時を振り返る。

他にも、日本において製品設(shè)計擔當としてプロジェクトに選抜されたのが、大井と同じ部署に所屬する小林だ。「顧客からの問い合わせがあったタイミングで、ちょうど先方が求める仕様に近い製品の開発を手掛けていたのです」とそのきっかけを語る。

かくして、日本と米國を中心としたグローバルなプロジェクトがスタートすることになる。

困難なプロジェクトを支えた組織力とパートナーとの協(xié)業(yè)

新たなプロジェクトを立ち上げるには、いろんな場面で苦労するもの。このプロジェクトでは、24時間対応で顧客の要求に応える営業(yè)體制の整備はもちろん、その仕様の技術(shù)的なハードルをクリアすることが大きな障壁の1つだった?！袱ⅳ胩囟à涡阅埭摔膜い皮稀緛砥筏吮趣伽?.5倍から2倍のスペックが求められていました」と小林。その仕様を満たすため、何度も試作品を持ち込み、繰り返し検証しながら顧客の要求に応えていったという。「基本の性能とは大きくかけ離れたものだったため、社內(nèi)にナレッジや知見がありませんでした。1つずつ試作して試行錯誤を繰り返し、製造設(shè)備についても生産技術(shù)の方と議論を重ね、何とか作っていただきました。営業(yè)も含め、チーム一丸となって製品開発に取り組んだのです」（小林）。

FAEとして顧客と直接やり取りする立場にあった大井は、言葉の壁はもちろん、顧客社內(nèi)の文化、企業(yè)文化の違いに戸惑うことがあったという。「何か問題が起こっても、秘匿性の高いプロジェクトであるがゆえに、詳細はメール、電話ベースではどうしても教えてもらえない。結(jié)局、組み立てを行っている生産現(xiàn)場まで直接出向かなければなりませんでした」（大井）。たとえ現(xiàn)場に赴いたとしても、生産現(xiàn)場の組み立てラインにすら入れてもらえない狀況。結(jié)局、破損したコネクタを工場內(nèi)にある會議室に持ってきてもらい、その狀況から原因を推し量っていく必要があったという。つまり、実際の生産現(xiàn)場特有の事情に合わせて“製品を自主的に改善すること”というスタンスだったのだ。

品質(zhì)はもちろんだが、コストや製造ラインの短期間での立ち上げなど、その後も課題は山積だった。通常であれば製造ラインを1つ作るには、金型や設(shè)備を加えて4カ月程度の期間が必要となるが、今回のプロジェクトでは多くの製造ラインをわずか1年で立ち上げるという、現(xiàn)実的にハードルの高いスケジュールに挑むことになる。この困難に立ち向かうために、生産技術(shù)専任チームによる、既存設(shè)備設(shè)計の大幅な見直しや、各協(xié)力會社にいるエース級の方を數(shù)名ずつ選出してもらい、全員同じ場所に集合してラインを作っていったのだ。「1か所に集まることで技術(shù)交流も生まれ、各協(xié)力會社それぞれに知見がたまっていくような環(huán)境を作りました。短期間で立ち上げるためにも、各協(xié)力會社の皆さんとともに合宿をやり続けたことで、結(jié)果としていい相乗効果を生まれました」と小林。

マイクロコネクタ市場でのナンバーワンを目指して

しかし、何とか製造ラインも整備して納品にこぎつけたものの、次のプロジェクトには殘念ながら採用に至らないという事態(tài)に直面する?！钙焚|(zhì)を重視するがゆえに製造ライン數(shù)が多くなってしまったことが、かえってネガティブな印象を與えてしまった」と村木は分析する。その狀況を挽回するためには、生産能力を現(xiàn)狀の3倍にまで引き上げることだった?！干鐑?nèi)からは“競合と同様なやり方ではヒロセ品質(zhì)が保てない”“そんなライン、とてもじゃないが作れない”と生産技術(shù)や工場のほうから猛烈な反発があった」と小林は振り返る。それでもチームとして経営層を巻き込み、何とかビジネスを継続するために奔走することに。結(jié)果として、1から製品設(shè)計や製造プロセスそのものを抜本的に見直すことで、採用が見送られた次のバージョンでは再び採用を勝ち取ることに成功する。「今では別プロジェクトへの橫展開も増えており、ビジネスを成長させていくことができました」と村木は嬉しそうに語る。

そして今回のプロジェクトを経たことで、超大量品を扱う商談に対しても柔軟に対応できるよう、內(nèi)部リソースを有効活用すべきだという聲が社內(nèi)的に高まっていったという。一方で、グローバル市場のなかで競爭に打ち勝っていくためには、為替リスクも考慮した設(shè)計?製造體制に移行すべきだという考えが今回のプロジェクトで広がることに。その結(jié)果、現(xiàn)在では子會社化した韓國にあるヒロセコリアと合同プロジェクトで設(shè)計、製造を一體化させるプロジェクトを強力に推進している狀況にある。「以前から人材交流は盛んに行われていました。マイクロコネクタの世界市場ナンバーワンになるべく、グローバルな設(shè)計?製造體制を整えています」と新たな展開について村木は語る。

プロジェクトを経験することで醸成されたモノづくりへの想い

今回のプロジェクトを経験したことで、それぞれ得たものは大きい。「膨大な仕事をこなすなかでメンタル的にタフになっただけでなく、生産技術(shù)の人たちと議論を進められたことで、モノづくりに対する知識は以前に比べて充実した。製造技術(shù)に関する知識だけでなく、顧客側(cè)に立った知見も今まで以上に身に付けて行きたい」と小林は語る。また大井は「しっかりと顧客のニーズをつかむことができれば、使ってもらえる製品が生み出せるということが実體験として理解できました」と語る。最後に村木は「グローバルなビジネスでは日本的な“あうんの呼吸”で察してもらうことはできないため、きちんと事実をベースに、ロジカルに相手と交渉していくことが、グローバルで戦っていくためには大切」と得られた知見について語った。

グローバル市場で勝ち抜いていくためには、困難な課題にも積極的に挑戦していくことが重要だと教えてくれた今回のプロジェクト。民生機器の分野での「超大量品」プロジェクトで得た知見を武器に、産業(yè)機械や自動車などの領(lǐng)域にも応用していくことが、ヒロセ電機のさらなる成長につながっていく原動力となっていくことだろう。